◆ 隣保館設置運営要綱 ◆

【厚生労働事務次官通知】

厚生労働省発社援第0829002号
平成14年8月29日

都道府県知事
各 指定都市市長 殿
中核市市長

隣保館の設置及び運営について

隣保館は、社会福祉法に基づく隣保事業を実施する施設として、その事業を実施してきたところであるが、さらなる事業の推進を図るため、別紙のとおり「隣保館設置運営要綱」を定め、平成14年4月1日から施行することとしたので、その適切かつ円滑な運営を図られたく通知する。
なお、この設置運営要綱は、国において運営費等について予算措置をする隣保館の事業等を定めるものであるので、念のため申し添える。
おって、平成9年9月9日厚生省発社援第198号厚生事務次官通知「隣保館の設置及び運営について」は廃止する。

(別紙)

隣保館設置運営要綱

第l 目的

隣保館は、地域社会全体の中で福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を総合的に行うものとする。

第2 設置及び運営主体

隣保館は、市町村が設置し、運営する。

第3 運営の方針

隣保館は、第1の目的を達成するため、地域住民の理解と信頼を得つつ、地域社会に密着し、また、地域住民の生活課題に応じた事業計画を長期的 展望の下に毎年度策定し、その計画に基づいて事業を実施するものとする。
隣保館の運営に当たっては、地域住民の自立の支援を基本とするとともに、関係機関、社会福祉法人及びボランティア等との連携を図るものとする。
隣保館は常に中立公正を旨とし、広く地域住民が利用できるよう運営しなければならない。
隣保館は利用者が守るべき規律、その他施設の管理についての重要事項に関する規定を定めておかなければならない。
隣保館は、その利用者に対し必要な情報を提供するように努めるものとする。
隣保館は、利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じるものとする。

第4 事業

隣保館は、次の基本事業を行うほか、地域の実情に応じて特別事業を行うものとする。
なお、特別事業については、その事業の全部又は一部を社会福祉法人等に委託することができる。

  1. 基本事業
    • (1)社会調査及び研究事業
      地域住民の生活の実態を調査し、その生活の改善向上を図るために
      必要な事業を研究する事業
    • (2)相談事業
      地域住民に対し、生活上の相談、人権に関わる相談に応じ適切な助言指導を行う事業
      なお、相談に当たっては、地域住民の利便を考慮して、機動的な相談体制を確立し、   また、相談の結果、必要があるときは関係行政機関、社会福祉施設等に連絡、
      紹介を行うほか、その他適切な支援を行うよう努めること。
    • (3)啓発・広報活動事業
      地域住民に対し、広く人権に関する理解を深めるため、
      日常生活に根ざした啓発・広報活動を行う事業
    • (4)地域交流事業
      地域住民を対象とした各種クラブ活動、レクリェーション、
      教養・文化活動等地域住民の交流を図る事業
    • (5)周辺地域巡回事業
      隣保館の利用が困難な周辺地域住民に対して、
      専門家による巡回相談、啓発講演会開催等を実施する事業
    • (6)地域福祉事業
      地域における様々な生活上の課題の解決を図るため、
      地域の実情に応じて行う事業
  2. 特別事業
    • (1)隣保館デイサービス事業
      障害者及び高齢者等が隣保館を利用して、創作・軽作楽、
      日常生活訓練等を行うことにより、その自立を助長し生きがいを高める事業
      (実施要領は別紙1のとおり。)
    • (2)地域交流促進事業
      休日開館や各種講座等の開催により、地域住民相互の交流・促進を
      図る事業(実施要領は別紙2のとおり。)
    • (3)継続的相談援助事業
      長期的、継続的な支援を必要とする者に対して、
      総合的に相談援助を行う事業(実施要領は別紙3のとおり。)
第5 職員
  1. 隣保館には、館長を置くとともに、必要に応じて指導職員を置くものとする。
  2. 館長及び指導職員は、社会福祉主事の資格を有する者若しくは社会福祉事業に2年以上従事した者、又は隣保館の運営に関し、これらと同等以上の能力を有する者であって、隣保館の運営に熱意のあるものでなければならない。
  3. 館長及び指導職員は専任とする。ただし、館長については他の施設と一体的に管理を行う必要がある等一定の合理的事由がある場合は、この限りでない。
第6 規模・構造・設備
  1. 隣保館の規模は132㎡以上とし、事業の実施状況を勘案し各種事業を行うために必要な規模を確保するものとする。
  2. 隣保館の構造は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等の関係法令の定めによるものとする。ただし、木造の場合は、原則として防火構造とする。
  3. 隣保館にはおおむね次に掲げる設備を設けるものとする。ただし、他の社会福祉施設等と設備の一部を共用すること等により、隣保館の運営上支障が生じない場合はこの限りでない。

なお、次に掲げる設備を設けるほか、2階以上の建物については、昇降機を設置するほか、段差解消等のための傾斜路等の整備を図る等、その環境整備に努め、高齢者や障害者の利用に配慮すること。

  • (1)相談室
  • (2)会議室・研修室
  • (3)調理室
  • (4)教養娯楽室
  • (5)多目的利用室
  • (6)事務室
  • (7)その他事業の実施に必要な設備(図書室、展示コーナー等)
第7 備品

隣保館には、事業の実施に必要な備品を備えるものとする。

第8 関係行政機関等との連絡協議

隣保館は、事業の円滑な実施を期するため、福祉事務所等の関係行政機関との連絡協議を定期的又は臨時に行うとともに、社会福祉法人等とも同様に積極的な連絡協議に努めるものとする。

第9 帳簿の整備

隣保館には、その管理運営に必要な諸帳簿を備えなければならない。

(別紙1)

隣保館デイサービス事業実施要領

1 対象者

対象者は、障害者及び高齢者等とする。

2 事業の内容

事業の内容は次のとおりとし、地域の実情、利用者の実態を勘案し、
3事業以上を選択して実施するものとする。

  • (1)日常生活訓練
    日常生活動作、歩行、家事訓練等
  • (2)社会適応訓練
    会話、手話、点字、カナタイブ、生活マナー等
  • (3)創作・軽作業
    絵、書、陶芸、木彫り、刺繍、編物、園芸等の技術援助及び作業
  • (4)介護技術指導
    家族及びボランティア等に対する介護技術指導等
  • (5)更生相談
    医療、福祉、生活相談等
  • (6)その他
    障害者及び高齢者等の福祉の増進を図るために必要な給食サービス、
    スポーツ、レクリェーション等の事業
3 事業実施上の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (1)常に対象者のニーズの把握に努めるものとし、
    そのニーズに基づき事業を計画的に実施すること。
  • (2)利用者が気軽に事業を利用できるよう配慮するとともに、
    利用者の意見を反映させるよう努めること。
  • (3)福祉事務所等関係機関、社会福祉法人及びボランティア団体等との密接な
    連携を図るとともに、地域社会の理解と協力を得られるよう配慮すること。

(別紙2)

地域交流促進事業実施要領

1 事業の内容
  • (1)休日開館事業
    • 事業内容
      土曜日、日曜日又は祝祭日に隣保館を開館して、クラブ活動、
      レクリェーション、教養・文化活動など各種の地域交流活動を
      実施する事業とする。
    • 開館日数
      土曜日、日曜日又は祝祭日に隣保館を開館する日数は、月2日以上とする。
    • 事業実施上の留意事項
      • (ア)常に地域住民のニーズの的確な把握に努め、休日に実施することにより、
        より効果的な地域住民の交流が図られる事業を実施すること。
      • (イ)関係行政機関、自治会その他地域の代表者及びボランティアグループ等
        との緊密な連携を図り、地域社会の理解と協力が得られるよう配慮すること。
  • (2)交流促進講座開催事業
    • 事業内容
      交流促進講座として、独自のテーマを設定するなど地域の実情に即した
      創意工夫のある講座を継続して開催し、地域住民相互の理解と交流を
      一層促進するものとする。
    • 実施回数等
      1か月当たり、l回2時間程度の講座をおおむね3回実施すること。
    • 実施上の留意事項
      •  (ア)常に地域住民のニーズの的確な把握に努め、より効果的な地域交流が
        図られる講座を開催すること。
      • (イ)地域交流の促進を図ることはもとより、実効ある講座となるよう、
        カリキュラム及び受講テキストの作成に配慮すること。
      • (ウ)講座種目に応じ、必要な講師の確保に努めること。
      • (エ)受講対象者が気軽に受講できるよう配慮すること。
2 事業実施上の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (1)上記の事業は地域の実情に応じて選択して実施できること。
  • (2)事業の全部又は一部を社会福祉法人等に委託できるほか、必要に応じて
    事業を共同で実施するなど、柔軟な形で協力又は連携を図り実施して
    差し支えないこと。

(別紙3)

継続的相談援助事業実施要領

1 対象者

隣保館において実施している相談事業の対象者のうち、
長期的、継続的な助言指導を必要とする者とする。

2 事業の内容

事業の内容は、次に掲げるものとする。

  • (1)支援方策検討会
    必要に応じ、おおむね次のような関係機関職員等からなる
    支援方策検討会を開催する。

    • 市町村職員
    • 福祉事務所職員
    • 職業安定所職員
    • 教育関係者
    • 民生委員
    • 人権擁護委員
    • 医療関係者
    • その他必要な関係機関の職員
  • (2)支援活動
    • 隣保館は、支援方策検討会において検討された支援方策に基づき、
      対象者に対する支援活動を実施する。
      その際、関係機関との緊密な連携を図るとともに、必要に応じ、
      支援方策検討会において支援方策の見直しを行うこととする。
    • 隣保館は、支援活動に関する記録を整備し、支援方策検討会に
      報告することとする。
3 事業実施上の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (1)基本的人権の尊重とプライバシーの保護に十分配慮すること。
  • (2)関係機関又は社会福祉法人等との連携を十分に図り、できる限り多くのサービス等を隣保館において提供できるようにし、あるいは居宅又は専門の施設等において提供されるサービスについても、その手続等を行うことができるように努めるほか、これらの手続等を援助するなどにより、福祉施策を必要とする者に対して、適切な施策が確実に提供されるよう、その支援に努めること。
  • (3)関係機関又は社会福祉法人等の協力も得て、必要に応じて巡回又は街頭相談を実施するなど、援助を必要とする者の把握等にも努めること。