◆ 隣保館設置運営要綱 ◆

【厚生労働省社会・援護局長通知】

社援発第0829001号
平成14年8月29日

都道府県知事
各 指定都市市長 殿
中核市市長

厚生労働省社会・援護局長

隣保館の設置及び運営について

 標記については、本日、「隣保館の設置及び運営について」(平成14年8月29日付厚生労働省発社援第0829002号厚生労働事務次官通知)により隣保館設置運営要綱(以下「設置運営要綱」という。)が示されたところであるが、これが趣旨等は次のとおりであるので事業の適切かつ円滑な実施に留意されるとともに、管内の市町村にその内容が周知されるようお願いする。
なお、この通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として発出するものである。

1 隣保館の今日的役割について

 隣保館は、昭和28年度にその整備について予算措置して以降、国民的課題としての同和問題の解決に資するため各種の事業を行い地域住民の生 活の改善や人権意識の向上等に大きく寄与してきたところである。この間、平成9年には、地域改善対策協議会の意見具申(平成8年5月)(参考1)及びこれを踏まえた閣議決定「同和問題の解決に向けた今後の方策について」(平成8年7月)に基づき、周辺地域住民を含めた福祉の向上や人権啓発のための住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして位置付けるとともに地域のニーズに似合った新規事業を新たに追加し、一 般対策としてその事業の強化を図り今日に至っている。
こうした中、平成12年6月には、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律が成立し、地域福祉の推進が今後の福祉の重要な課題とされ、また、本年3月には、人権教育及び人権啓発の推進 に関する法律第7条の規定に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」 (参考2)が定められ、新たな隣保館の役割が明らかにされたところである。
以上のとおり、隣保館は、地域における生活上の課題の解決に向けた地域福祉の推進や様々な人権課題の解決のための各種事業を実施するなど、その期待される役割はますます大きいものとなっている。

(参考1)
地域改善対策協議会意見具申(平成8年5月)-抜粋-

四 今後の重点施策の方向
(3)地域改善対策特定事業の一般対策への円滑な移行
1 基本的な考え方
既に述べたように、現行の特別対策の期限をもって一般対策へ移行するという基本姿勢に立つことは、同和問題の早期解決を目指す取組みの放棄を意味するものではない。今後の施策ニーズには必要な各般の一般対策によって的確に対応していくということであり、国及び地方公共団体は一致協力して、残された課題の解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。(略)

2 工夫の方向
(略)
社会福祉の分野においては、隣保館について、周辺地域を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、今後一層発展していくことが望まれる。地域の実態把握や住民相談といった基本的な機能に加え、教養文化活動の充実や地域のボランティアグループとの連携など地域社会に密着した総合的な活動を展開し、さらにこれらの活動を通じて日常生活に根ざした啓発活動を行うことが期待される。このため、隣保館等の地域施設において各種の事業を総合的にかつ活発に展開することができるよう、国として適切に対応すべきである。

(参考2)
人権教青・啓発に関する基本計画 -抜粋-

第4章 人権教育・啓発の推進方策
2 各人課題に対する取り組み
(5)同和問題
7 社会福祉施設である隣保館においては、地域改善対策協議会意見具申(平成8年5月17日)に基づき、周辺地域を含めた地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして総合的な活動を行い、更なる啓発活動を推進する。また、地域における人権教育を推進するための中核的役割を期待されている社会教育施設である公民館等とも、積極的な連携を図る。今般の設置運営要綱はこうした背景の下、これまでの成果を踏まえつつ、隣保館の事業の一層の推進を図ろうとするものであるので、以下の事項にもご留意の上、その運営に特段の配慮を願いたい。

2 隣保館の改築等について

 隣保館は、整備以降相当期間を経過したものも多くその改築等が当面の課題となっているものも少なくない。隣保館の整備(改築等)については、平成9年以降、社会福祉施設整備費において国庫補助の対象としているところであるのでこの活用を積極的に検討されたい。
なお、隣保館は従前、対象地域の世帯数による区分に応じて国庫補助を行ってきたところであるが、設置運営要綱でその活動地域を地域社会全体としたことからこの区分を廃止し、館ごとに事業の対象となる区域、実施する事業の内容等を勘案し、661㎡(別の要件を満たす場合には面積加算がある。)以内において、整備計画に基づく面積を補助対象とするようにすること。

3 隣保館の運営について

 隣保館の運営に当たっては、地域のニーズを反映した事業に積極的に取り組むことにより、隣保館への住民の期待に応えることが肝要である。このため、今般の設置運営要綱においては、従前「隣保館等における隣保事業の実施について」(平成9年9月9日付社援地発第81号厚生省社会局長通知)において示していた各種事業を地域の実情に応じて行う事業として設置運営要綱中に位置付けるとともに、これらの事業については、その全部又は一部を社会福祉法人等に委託できることとしたので、地域の実態及び館の人的配置等の実情等に応じた運営上の工夫を行うことにより効果的に事業が推進されるよう配慮されたいこと。また、公民館活動等との連携・協力についても配慮されたいこと。
なお、隣保館運営費に対する国庫補助についても、前記と同様の趣旨から大型館及び普通館の区分を廃止し、館ごとに、人的配置の実態、実施する事業の内容等を勘案し、予算の範囲内において補助対象とするようにすること。

4 隣保館が設置されていない地域における隣保事業について

 隣保館が設置されていない地域において、地域住民の生活の改善及び向上を図るとともに、地域住民の人権問題に対する理解を深めるため、既存の各種公的施設を活用して地域住民に対する隣保事業を実施する場合には、別紙「広域隣保活動事業実施要領」により対応されたいこと。

5 関係通知の改正等について

 この通知の施行等に伴い、次の通知を改める。
(1)隣保館等における隣保事業の実施について(平成9年9月9日付社援地第81号)の第二の全部を削除する。
(2)地域改善対策対象地域における生活相談員の設置について(昭和55年5月21日付社生地第82号)を廃止する。

(別紙)

広域隣保活動事業実施要領

1 実施主体

この事業の実施主体は、市町村とする。

2 実施施設

この事業は、公民館、集会所、各種センター等の公的施設を
活用して行うものとする。

3 事業の内容

設置運営要綱の事業のうち、当該地域の実情に応じた事業を行うものとする。

4 職員

事業の実施に当たり、非常勤の職員を置くものとする。

5 事業の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (l)基本的人権の尊重とプライバシーの保護に配慮すること。
  • (2)関係行政機関等との連携を密にするとともに、
    地域社会の理解と協力が得られるよう配慮すること。
  • (3)事業の全部又は一部を社会福祉法人等に委託できるほか、
    必要に応じて共同で実施するなど、柔軟な形で協力又は連携を図り
    実施して差し支えないこと。

隣保館デイサービス事業実施要領

1 対象者

対象者は、障害者及び高齢者等とする。

2 事業の内容

事業の内容は次のとおりとし、地域の実情、利用者の実態を勘案し、
3事業以上を選択して実施するものとする。

  • (1)日常生活訓練
    日常生活動作、歩行、家事訓練等
  • (2)社会適応訓練
    会話、手話、点字、カナタイブ、生活マナー等
  • (3)創作・軽作業
    絵、書、陶芸、木彫り、刺繍、編物、園芸等の技術援助及び作業
  • (4)介護技術指導
    家族及びボランティア等に対する介護技術指導等
  • (5)更生相談
    医療、福祉、生活相談等
  • (6)その他
    障害者及び高齢者等の福祉の増進を図るために必要な給食サービス、
    スポーツ、レクリェーション等の事業
3 事業実施上の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (1)常に対象者のニーズの把握に努めるものとし、
    そのニーズに基づき事業を計画的に実施すること。
  • (2)利用者が気軽に事業を利用できるよう配慮するとともに、
    利用者の意見を反映させるよう努めること。
  • (3)福祉事務所等関係機関、社会福祉法人及びボランティア団体等との密接な
    連携を図るとともに、地域社会の理解と協力を得られるよう配慮すること。

地域交流促進事業実施要領

1 事業の内容
  • (1)休日開館事業
    • 事業内容
      土曜日、日曜日又は祝祭日に隣保館を開館して、クラブ活動、
      レクリェーション、教養・文化活動など各種の地域交流活動を
      実施する事業とする。
    • 開館日数
      土曜日、日曜日又は祝祭日に隣保館を開館する日数は、月2日以上とする。
    • 事業実施上の留意事項
      (ア)常に地域住民のニーズの的確な把握に努め、休日に実施することにより、
      より効果的な地域住民の交流が図られる事業を実施すること。
      (イ)関係行政機関、自治会その他地域の代表者及びボランティアグループ等
      との緊密な連携を図り、地域社会の理解と協力が得られるよう配慮すること。
  • (2)交流促進講座開催事業
    • 事業内容
      交流促進講座として、独自のテーマを設定するなど地域の実情に即した
      創意工夫のある講座を継続して開催し、地域住民相互の理解と交流を
      一層促進するものとする。
    • 実施回数等
      1か月当たり、l回2時間程度の講座をおおむね3回実施すること。
    • 実施上の留意事項
      (ア)常に地域住民のニーズの的確な把握に努め、より効果的な地域交流が
      図られる講座を開催すること。
      (イ)地域交流の促進を図ることはもとより、実効ある講座となるよう、
      カリキュラム及び受講テキストの作成に配慮すること。
      (ウ)講座種目に応じ、必要な講師の確保に努めること。
      (エ)受講対象者が気軽に受講できるよう配慮すること。
2 事業実施上の留意事項

事業の実施に当たっては、次の点に留意すること。

  • (1)上記の事業は地域の実情に応じて選択して実施できること。
  • (2)事業の全部又は一部を社会福祉法人等に委託できるほか、必要に応じて
    事業を共同で実施するなど、柔軟な形で協力又は連携を図り実施して
    差し支えないこと。